桑実期胚移植 Morula Transplantation                       ART index


「胚盤胞移植」よりリスク低く
 体外受精した受精卵を、通常より約1日長く培養した「桑実胚(そうじつはい)」の段階で子宮に戻す新手法で、妊娠率が約2倍に高まることが、北九州市のセントマザー産婦人科医院の田中温院長らの研究でわかった。

 妊娠しやすい方法として急速に普及してきた「胚盤胞移植」に匹敵する妊娠率だが、胎盤を共有する特殊な双子の発生率が高いなど、最近指摘され始めた胚盤胞移植の問題点を克服できる可能性もある。4日から大阪市で開かれる日本受精着床学会で発表される。

 体外受精では通常、受精から2〜3日後の受精卵(細胞数4〜8個)で子宮に戻すが、妊娠率は20〜30%程度。このため着床寸前の段階まで長期培養する「胚盤胞移植」が普及してきた。ところが、「胚盤胞移植」では、〈1〉胎盤を共有する一卵性双生児、二卵性双生児の発生率が高くなる〈2〉凍結保存で受精卵が損傷を受けることが多い――などの欠点がある。

 田中院長らは、胚盤胞に至る前の桑実胚(細胞数16〜64個)の段階で1〜2個を子宮に戻す治療を276例実施。妊娠率は38〜56%で、胚盤胞移植の38〜58%と同程度だった。

 胚盤胞移植では2・5%が一卵性双生児だったが、桑実期胚移植では0%。流産率も胚盤胞移植の29・4%に対し20・3%で、桑実期胚移植のほうがリスクが低かった。

(2005年8月4日 読売新聞)